©Kiki
*
ぱらぱらと指でめくって 見ている
ページのなかの人になり
水分を捨てている ふたり
心中したいという気持ちで
生きている
レストランでも
乾いて
モンキーの顔を忘れてしまう
だれかが
オレンジの皮を
夕焼けに向かって投げた
青春している
(「ばか」 より)
*
亜熱帯
に放された
わたしのお姉さんはばら撒き
手で掬い手を延ばしまるで掲げて
ばら撒く
汗吸いあげる晩の月
お姉さん やあやあいいながら
風にのって
ばら撒く
飯よ
ちいさなちいさな
飯つぶよ
お膝立てたら
腐葉土の土に伏しなさい
と
ばら撒く よ
(「ばら撒き」 より)
*
海のバス
高速に入るまえ
今からさ とばすから
ビキニ
おまえをとばすから
舞ってくれよ
おまえ ボストンバッグじゃないし
おまえ裸足なんだから
ひらひら 見せびらかしてくれよ
僕に れいけつに 赤を
しけた 海水に 見せつけて
今から手を はなすから
ビキニ
ラインのこの島に しんだ風がふいたら
僕も骨だから おまえのほそい
紐をむすんでも背中は
おまえの骨だから ほら
黒 ハイネケンのあいつが
笑って ぶはっとふきだすように
舞ってくれ ビキニ
赤を ちょうだい
しけた 胸の谷間に
あなたの 指でほそい 紐を
むすんで もいっかい すこしはかわいらしく
ひとつの輪っかを ふたつの
輪にして むすんで
そして ほどいて 高速に入るまえ
今からさ とばすから
ビキニ
僕の 女はどこにいったんだろう
だるい 空 さむい とか
ぶつぶつ文句いいながら
うらさびれた あの家の裏
シャツとパンツに着替えているのか
(「ビキニライン」 より全文)
about
アスパラガス(1976-2012)
長崎県生まれ。享年36歳。
詩人としての活動は数年間ながら、現在もコアなファンを持つ。
舞台出演やアニメーション制作なども行い、多才ぶりを発揮。
アニメーション作品
雪 ブランコ
profile
キキ
1998年頃より詩作を、2002年頃より朗読を始める。
ときどきイベントのスタッフをしたり、プロデュースなども行っている。
→HP さかなのまつり
最初へ 前へ 1・2・3