詩集の帯には「『言葉で撮られた映画』全38篇のオムニバス」とあります。これらのすべてが「映画」であるかどうかは、読者それぞれの心に留まるままにお任せするべきだと思いますが、映像を意識したセンテンスも少なからず認めます。
これを映像にしようとすると、俳優ならびに監督の力量が相当問われそうですね。
「アイス」は病で余命幾ばくもない男の独白という体裁をとっていますが、これらの作品群にほぼ共通しているのは「とにかく生き続けようとする人々の物語」です。他にも架空や電脳の世界を舞台としないこと、特殊な職業に就いてる登場人物がほとんどいないことなどもありますが、こうした作者の人格や姿勢が、読者にみずみずしい感触を与えているのでしょう。
挿絵は商業誌で活躍中の漫画家、笠部哲。全カット完全描き下ろしで、漫画とはタッチの違ったプロの仕事です。