この詩集は、一生手放すことはないだろう、と
手にしたときから感じられる詩集があります。
本というのは、読むこちらと直接の結び付きを持って
それが生涯褪せないと、おおげさではなく言えるものだというのは
不思議なことでしょうか、ごく自然なことでしょうか。
そこに書かれた詩人の真実が、
疑いようなく伝わってくるものに惹かれます。
人が生きる軌跡が、詩の姿をとったとき
なぜその人の、なにもかもがありありと出てしまうのでしょう。
そこに言葉の魅力とこわさがあり、
それが詩そのものだというのは、ありふれた感想にすぎないかもしれませんが
そうした一冊をひもとくとき
あらためて詩の、詩集の、魅力と深淵に近づく気持ちになります。
『別れの絵本』は、
ふたりの子を見つめる章(I)と、両親との別れを語る章(II)の、
二章から成る詩集です。
死の厳然とした重みを知る人が
生への愛情を注ぎながら、なおその愛情を言葉にしようとする、
それはどんな営みだろうかと思います。
きっとそれは、愛情とも悲しみとも、近しいけれど同じではない、
詩という表現に、自分を置くことであり、
そのように生身をさらすところに詩が生まれる、という詩作には
家族を題材にするときには殊更、
命を詩に刻み込もうとする、書き手の決意が織り込まれると感じます。