reviews
詩と出会う

essays
いま

interviews
人と出会う

冬の光景

構造

ノロになった。魚介類はいろいろ食べていたので何が原因なのかはサッパリ判らない。牡蠣が原因かもしれないし、ほたてかもしれない。ともかく食を抜かなければならない。何日の何時まで抜かなければならないかはわからないが、もう内容物が出なくなるまでだ。ポカリスウェットを一リットル用意した。

あれは腹に水がたまる。というより胃腸がまともに働いてないというのが自分でわかる。溜まったままで消化されないのだ。それが結果としてどうなるかはいいたくない。会社は食品関連会社ではないが、はいたものからノロは容易に伝染してしまうので、影響がないと判断されるまで休むことになった。ノロは年末にも一度かかっており、二度目と言うことで至極よい顔はされなかったが、感染者が大量に出るほうを危惧したのかもしれない。3日程度の休みが出来た。

腹が冷えるので温泉に行くことも考えたが、これはテロみたいなもんだ。何人に伝染するかわかったものではない。仕方なしに昼間、自宅の風呂桶にお湯を入れて食塩を大量に投入し、温泉気分だけでも味わうことにした。

じわじわと温まっていく腹が心地よかったが、逆に痛みもした。欠勤のペナルティが明後日を含めれば総計で七日分に達したなとおもいながら、欠食気味の頭はお湯でぼおっとして、外に積もる雪を考えていた。

そんなときに庭から調子はずれのリコーダーの音が聞こえた。プゥープゥーとかすかに音がする。さすがに小学生もまだ学校の時間のはずだが、誰だこんなときに、と窓をあけて外を見てみると丁度四、五羽の白鳥が上空を飛んでいた。鳴き声だったのだ。こちらに近づいてくる最中だったために、ドップラー効果で高く聞こえたのだろう。

遠くなっていく声はそのうち、風の音より小さくなり、どでんとした雪山だけが遠くに見えた。なにかあきらめたというときには、冬の光景すらつめたく太った母親のように感じられる。

profile

構造(こうぞう)

1977年 宮城県仙台市生まれ。
詩集に『国道四号線のブルース』(1000番出版)

・「詩楽」vol.1に詩を掲載

>>essays