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松下育男『きみがわらっている』

(ミッドナイト・プレス、2003年6月24日発行)

手にとろうとすると、はかなく消えてしまいそうな感覚。
たった一言つぶやいただけで、遠ざかってしまう心。

そんな事象を、
詩は、それでもあえて、
言葉で言い表わそうとするところがあります。

詩とはそういうものだからこそ、
何とも言いようのない感覚や、もうわからなくなってしまった心を
言葉にできるときが、あるんだと思います。

松下育男という詩人は、
もしかしたら、彼自身がはかなく消え入りそうで
わずかな気配にも遠のいてしまう姿をしているのかもしれません。

つかまえようとすると、するりとすり抜けてしまうような
言葉なのに言葉じゃないような、

感覚よりも、心よりも、
こんな詩を書いてしまう詩人の手つきのほうがよっぽど
はかなく、あやふやなまま、それでいて
何にもゆるぎない、勁さをもって
純粋な詩を純粋に書いてしまいます。

にぎる   松下育男


にぎる っていうことばは
しっているよね

そのものにせっしょくして
つつみこみ
ちからをこめる ことだね



そのにぎられるものの おおきさ
つよさによって ぼくはいつも
ちからを
かげんするんだ

このよで もっとも
やわらかいものを
にぎるときは

ゆっくりとちからを そのもののひょうめんに
つたえ
おしかえしてくる かすかな いきるちからを
うけいれながら
じぶんのほうへ すこし
しりぞくこと
なんだ

にぎるものと にぎられるものが
やわらかくくいこみながら べつのせかいへ
そのまま
にぎられてゆく

ということかな きみの
てをにぎると いうことは

文/編集子

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