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今月のコトバト

2014.4

 ふしぎな ポケット   まど・みちお

ポケットの なかには
ビスケットが ひとつ
ポケットを たたくと
ビスケットは ふたつ

もひとつ たたくと
ビスケットは みっつ
たたいて みるたび
ビスケットは ふえる

そんな ふしぎな
ポケットが ほしい
そんな ふしぎな
ポケットが ほしい

nuko

illustrated by ©Yuh Morimoto

 まど・みちお作詞の「ふしぎな ポケット」や「ぞうさん」「やぎさん ゆうびん」「一年生になったら」など、どれもなんてことないような歌でいて、よくよくかみしめてみると、じんわり深く、言葉の奥行きが感じられてきます。

 ビスケットをいっぱい食べたいな、という気持ちが朗々と表わされるこの詩では、おやつが好きなこどもの気持ちがユーモラスに捉えられていますし、また、ちょっと見方を変えてみると、飢えとも飽食とも書かれていないのに、受け取るこちらの読み方しだいで「ふしぎな ポケット」なるものに対する印象はさまざまです。

 そうした歌詞として有名なもの以外にも「リンゴ」や「地球の用事」など、数々の詩を生んだ、まど・みちおですが、98歳のときに発表した詩集『うふふ詩集』で、こんな詩を書いています。

 傑作   まど・みちお

これ若い人の詩だが
ワカランから
傑作なんだろうが
でもワカラン
ということがワカルから
大傑作とまでは
いかんのだろうよ

見ても見えんで
ナンにもない
のが
大傑作だろうよ
な たぶん

 「ワカラン/ということがワカル」詩とは何でしょう。意味はワカラン、でも正体はワカルということでしょうか。「見ても見えんで/ナンにもない/のが/大傑作」と続きますが、これは言い換えれば、ワカルけれどもワカラン詩。そしてこのワカランとは、ワカランということさえワカラン詩ではないでしょうか? 詩の意味はワカル、でもワカルはずなのにワカラン、そしていつしかナンにもないという詩の姿を、まどさんは追い求めたのでは、と想像します。

 まど・みちおの詩には、書かれた言葉の意味を汲んでも汲みきれない、沈黙の底の深さを覚えます。いくらわかったつもりになってもなお、とらえきれない謎がしん、と読後に残ります。意味でもなく、イメージでも暗示でもなく、沈黙にぴったりと寄り添われて際立つのは、言葉そのものの不思議さかもしれません。

文/編集子

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